インド生まれの「そらちゃん」用車椅子製作レポート

 

2002.1.28 私のホームページを見た、インド在住のMIHOさんからの一通のメールで、それは始まりました。

MIHOさんは、海外赴任の父親と一緒にインドに住んでいて、生まれながらに下半身が麻痺している「そらちゃん」というストリートドッグを飼っています。その時は、インド人に頼んで作って貰った車椅子を使用していましたが、安定が悪く、タオル程度の障害物でも倒れていまうとのことでした。

インターネットで車椅子の情報を探したところ、私のホームページを見つけ、是非作り方を教えてほしいとのメールをいただきました。

その後、メールのやり取りを重ねましたが、女性が車椅子を作るのは難く思え、また、インドでは、あまり材料も揃いそうもないので、私が製作してあげる事にしました。

「そらちゃん」はアドと違って、まだ成犬ではなく、成長過程にあるそうですが、大きさは柴犬くらいとのことで、車椅子の強度に充分配慮することにしました。

なにしろ、海外なので、「そらちゃん」を直接見ることができないため、体のサイズを聞き、更に成長しても対応できるよう、少し大きめに車椅子を製作しました。

「そらちゃん」の体のサイズは次のとおりです。

A お尻から肩(前足のすぐ後ろ)までの長さ  33センチ
B 肩の上から地面までの長さ(胴体の高さ)  38センチ
C 腿の付け根から計った後ろ足の長さ     31センチ
D 後ろ足の腿の付け根の円周(周りの長さ)     22センチ 
E 胸の周りの円周(周りの長さ)            47センチ
F 前足の長さ                25センチ
G 肩の幅(身体の幅)                   16センチ
H 腰の幅(身体の幅)                   15センチ
I お腹の下から地面までの距離        24センチ
   
体重 9キロ  (2002年2月17日現在)

それでは、写真を交えた製作レポートをご覧下さい。

参考までに、今回の車椅子に使用した材料の殆どは、「東急ハンズ」という店で購入しました。(若干の工具を含んで、材料費は18,000円強です)

circle09_yellow.gif MIHOさんとそらちゃんは、3/17に日本(名古屋)に無事帰国しました。現在、そらちゃんは検疫中ですが、2002.3.20に宅配便で車椅子を名古屋に送り、早速試して貰いました。

circle09_yellow.gif 電話で状況を聞いたところでは、赤い腹巻きを止めるマジックファスナーの位置と、後ろ脚を止めるナイロンベルトが若干長いようですが、フレームの強度にも問題はなく、車輪もスムーズに回るので、そらちゃん楽に歩けると、すごく喜んでくれました。

circle09_yellow.gif 前述の不具合は、手縫いでも可能なので、MIHOさんが手直ししてみることになりました。(後日、車椅子姿の写真を掲載します)

これが、そらちゃんです

 

使用している車椅子の写真を見ると、プラスチックのキャスターを前後に配置し、両脇はごく小さなタイヤが付いているようです。

今回使用したタイヤです。直径は約15cm位ですが、段差や障害物を乗り越えるためにも、軽くてなるべく大きなタイヤが理想です。

使用したアルミ材は、幅45mm厚さ3mmと幅25mm厚さ2mmの板材で、車軸は10mmのアルミの丸棒です。 また、車輪の回転の滑らかさと車軸の取り付け強度を上げるため、フランジ付きシールドベアリングを使用しました。

アルミの板材をサイズに合わせてジグソーでカットし、ドリルで穴を開けて、ステンレスビスで止めて行きます。

  

・ 左の写真 今回は、安全性と見栄えを考え、全てステンレスの袋ナットを使用しました。

・ 右の写真の穴は、直径18mmと大きいので、東急ハンズで加工して貰いました。

・ ステンレスボルトは、そらちゃんの体を傷つけないように、トラスネジという頭が丸く、出っ張りが少ない物を使用し、上の写真のナットは車椅子の外側に出るようにします。

シールドベアリング部のアップです。真ん中に直径10mmのスリーブ管が付いていて、車軸を通し、イモネジで止めるようになっています。

 

・ 強度を考え、斜めにも補強を入れています。

 

アルミ材は、万力を使って曲げて行きます。

・ 板材を直角にしたところには、斜めに補強を入れて行きます。

途中で仮組みし、タイヤを付けて見ました。

・ 斜め前方から見た仮組み状態の車椅子

・ アドの車椅子とそらちゃん用車椅子の比較です。

・ 幅と長さは、それ程変わりませんが、そらちゃん用車椅子の方がかなり背が高いです。

・ そらちゃんは、家で留守番している間、長時間車椅子を着けることになるため、足の鬱血を防ぐために、ベルトで後ろ足を吊るのではなく、後ろ足を通した腹巻き状の吊り具をナイロンの布とナイロンベルトで製作しました。

・ 写真に写っているアルミ金具を、車椅子に引っかけて吊り下げることになります。

・ 赤いナイロンの布は、マジックファスナーで、パンツのような形になります。

・ 黒い部分は、補強のため、幅30mmのナイロンテープをミシン縫いしてあります。

・ 肩当ての部分には、赤いウレタンパイプをアルミ材に被せて、クッション性を持たせています。

・ とんがり帽子の先に見える黒いベルトが、胸を止めるナイロンベルトです。

・ 上の赤い腹巻きを、車椅子に引っかけたところ。

・ 散歩用品を入れるミニデイパックを取り付けました。

・ 左の写真に追加し、後ろ脚を支えるため、後方にアームを伸ばし、マジックファスナー付きの黒いナイロンベルトを取り付けました。

・ 車椅子を上から写したところです。

・ 後ろ脚を止めるナイロンベルト部のアップです。輪の直径は、マジックファスナーで変えることができます。

・ 完成した車椅子の写真です。

・ MIGHOさんが、「そら」ちゃんの車椅子姿の写真を送ってくれました。

・ そらちゃんは、3月末まで検疫で外に出られないので、家の中で車椅子をつけてくれました。

・ 左下の写真は、そらちゃんの子犬の時の写真です。ずいぶん目がパッチリした子だったようです。

・ 下の写真は、MIGHOさんが、インドで「はなちゃん」と「うたちゃん」という2匹の犬を引き取ったとき、インドの新聞に取り上げられたそうで、その新聞の抜粋です。(引き取った時は、骨と皮ばかりになるほど痩せ、脱水症状・貧血・寄生虫などで、ひどい状態だったそうです。)

・ とりあえず、車椅子の完成までの写真を掲載しましたが、後日、そらちゃんが車椅子を着けている写真を掲載しますので、また来て下さい。

・ 2002.3.31 そらちゃんの車椅子姿を載せました。 4月には、MIHOさんがそらちゃんを連れて、名古屋から東京に出てこられるそうで、アドと一緒に車椅子を連ねて散歩をするのが、今から楽しみです。

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